六命(ENo.53/61)記録だったり。お菓子の記録だったり。
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2010.04.08 Thu
探索24日目
死神として生きるようになってから時の流れに取り残され、移ろい行く時はただ漠然と過ぎていった。
1000年も経てば周りの風景も変わった。・・・私は何も変わらないまま
あの時故郷を失った悲しみを無くすために死神に成り果てた
確かに悲しむ心は無くなった
何かを楽しむ心も
他者を愛する心も
やがて、自分がここに存在している意味など在るのだろうかとも考えたが、考えるだけ無駄だと思った。
――――――――――
少女は大きな窓のある部屋のベッドでずっと床に就いていた。
来る日も来る日も目を閉じたまま
ずっと寝ているわけではない、目が見えないのだと気づいたのはそう時間がかからなかった。
たまたま目に入っただけなのに何故かずっと少女を見ていた。・・・遠くから
おそらく自分と理由は違えど”不幸”である少女がどう人生を全うするのか気になったのかもしれない。
――――――――――
「天使さん?」
「今日は近くに来てくれたのね」
急に声を掛けられて驚いた。
部屋の中からの声、今日はいつもの窓が開いていた。
少女がじっとこちらを見ていた。
「・・・天使ではない」
「・・・目、見えていたのか?」
「ううん、目は見えない」
「でも、翼を羽ばたかす音がしたもの。お母さんに天使には翼があるって聴いたわ」
目を閉じたまま少女は微笑んだ
「ただの鳥かもしれないだろう」
「他の鳥さんとは音が少し違ったわ。・・・フフッ それに、私の言葉に返してくれたじゃない」
「・・・・・・」
「・・・ずっと部屋から出ないのか」
自分の正体を聞かれる前に話を逸らそうと思った。
この目の見えない無垢な少女に自分が”死神”だと告げるのはどこか気が退いた。
「私、目も見えないし、身体も弱くてあまり動くことができないの」
「・・・人より不自由、狭い檻の中で過ごす人生・・・それで絶望しないのか・・・?」
「どうして?」
少女はキョトンと不思議そうな顔をした
悲観的になると思っていた。意外な返しにこちらが驚かされた。
「私は絶望なんてしない。」
「目が見えなくても、身体の自由が利かなくても、何も不自由ではないわ」
少女はまた微笑んだ
「だって耳を澄ませば小鳥のさえずり、人々の楽しげな声、窓の外からは優しい花の香り、たくさんのものが私を癒してくれるのよ」
「私の目の前には温かな世界が広がっているわ」
少女の目は閉ざされたままだが、とても自信に満ちて目を輝かせているであろう表情をしていた
「・・・・・」
人とはこんなにも強く暖かいものだっただろうか
驚きばかりで困惑していたが、心の奥底が何故だか軽くなった気がした
「天使さん、どうしたの?」
黙っている私に少女が問いかけた
「・・・私にもその世界はあるのだろうか・・・?」
死神として生きるようになってから時の流れに取り残され、移ろい行く時はただ漠然と過ぎていった。
1000年も経てば周りの風景も変わった。・・・私は何も変わらないまま
あの時故郷を失った悲しみを無くすために死神に成り果てた
確かに悲しむ心は無くなった
何かを楽しむ心も
他者を愛する心も
やがて、自分がここに存在している意味など在るのだろうかとも考えたが、考えるだけ無駄だと思った。
――――――――――
少女は大きな窓のある部屋のベッドでずっと床に就いていた。
来る日も来る日も目を閉じたまま
ずっと寝ているわけではない、目が見えないのだと気づいたのはそう時間がかからなかった。
たまたま目に入っただけなのに何故かずっと少女を見ていた。・・・遠くから
おそらく自分と理由は違えど”不幸”である少女がどう人生を全うするのか気になったのかもしれない。
――――――――――
「天使さん?」
「今日は近くに来てくれたのね」
急に声を掛けられて驚いた。
部屋の中からの声、今日はいつもの窓が開いていた。
少女がじっとこちらを見ていた。
「・・・天使ではない」
「・・・目、見えていたのか?」
「ううん、目は見えない」
「でも、翼を羽ばたかす音がしたもの。お母さんに天使には翼があるって聴いたわ」
目を閉じたまま少女は微笑んだ
「ただの鳥かもしれないだろう」
「他の鳥さんとは音が少し違ったわ。・・・フフッ それに、私の言葉に返してくれたじゃない」
「・・・・・・」
「・・・ずっと部屋から出ないのか」
自分の正体を聞かれる前に話を逸らそうと思った。
この目の見えない無垢な少女に自分が”死神”だと告げるのはどこか気が退いた。
「私、目も見えないし、身体も弱くてあまり動くことができないの」
「・・・人より不自由、狭い檻の中で過ごす人生・・・それで絶望しないのか・・・?」
「どうして?」
少女はキョトンと不思議そうな顔をした
悲観的になると思っていた。意外な返しにこちらが驚かされた。
「私は絶望なんてしない。」
「目が見えなくても、身体の自由が利かなくても、何も不自由ではないわ」
少女はまた微笑んだ
「だって耳を澄ませば小鳥のさえずり、人々の楽しげな声、窓の外からは優しい花の香り、たくさんのものが私を癒してくれるのよ」
「私の目の前には温かな世界が広がっているわ」
少女の目は閉ざされたままだが、とても自信に満ちて目を輝かせているであろう表情をしていた
「・・・・・」
人とはこんなにも強く暖かいものだっただろうか
驚きばかりで困惑していたが、心の奥底が何故だか軽くなった気がした
「天使さん、どうしたの?」
黙っている私に少女が問いかけた
「・・・私にもその世界はあるのだろうか・・・?」
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